京の茶室展@ロンドンに参加してきました

2017年7月20日から実施されている京の茶室展に参加してきました。

オープン当日は、セレモニーイベントとして京都から竹の茶室「帰庵」のプレゼンテーションや、書道家 川尾朋子さんのライブパフォーマンスなどが行われました。

私は、準備段階で地元の京都とロンドンの橋渡しとして動いたことや、当日に使用した抹茶を提供しました。

今回の主催者はロンドンに拠点をおくダイワ日英基金さん。ロンドンの一等地、リージェンツパーク沿いの通りに面した場所にあります。
 
私と大和日英

私も着物を来ての参戦です(着付け下手です。。)
招待制のエクスクルーシブなパーティで、日本文化に関心がある方を中心に参加されていました。在英の日本人の方も何名かいらっしゃっていました。イベントは大変盛況でいつものイベントより多くの集客があったそうです。
 
 

書道のライブパフォーマンス

 
まず、川尾さんのライブパフォーマンスです。私もはじめて拝見しました。言葉で説明するのが難しいのですが、彼女が筆を構えると、その場の空気が凛と張りつめて、空気がかわることを感じます。その場で書かれる作品は世界中にひとつしかないもの、それをこの場でみなさんとつくる、というようなことを仰っていました。書道というのは、その道を極めると、文字を自分で意思で書くのではなく、筆が天と繋がって、天に書かされているような感覚になるそうです。彼女のライブパフォーマンスを見ると、まさにその瞬間に立ち会えるような体験ができます。
 
川尾朋子さんのライブパフォーマンス
 

帰庵のプレゼンテーション

次に帰庵のプレゼンテーションです。一言でいえば、お茶の新たな可能性を教えていただいたような、そんな気分になるお話でした。以下、少し文章が多くなりますが、私が個人的に感じたことをこのブログに残しておきます。
 
まず、帰庵というのは、この写真にあるような持ち運び可能な竹で作られた茶室です。
 
竹の茶室 帰庵
竹の茶室 帰庵

※また、記事の冒頭の写真は、ロンドンのハイドパークにてお茶をした時の写真です。
彼らは、持ち運び可能な竹の茶室を海辺や山奥や川辺など、いろんな場所で野点をします。茶道といえば、非常に敷居の高いイメージがありますが、彼らは極めて敷居が低く、誰でも参加できるお茶会を提唱しています。
 
彼らは茶道のルールよりも、大地を感じながら特別な空間で、茶を飲みながら自然を感じることを重んじます。不完全な造りである帰庵という茶室の中で、自分の創造力をもって心の中に茶室を完成させ、自然や世界の中にある自分に視点を向けます。想像力が研ぎ澄まされるからこそ、自然の中の自分を意識することができるわけです。そして、自然に、世界に対して、ちっぽけな自分を知り、また、自然に生かされている自分の存在を感じ、全てに対して謙虚になり、感謝する。その気持ちこそ、私たち人間の帰るところ、即ち「帰庵」だ、というわけです。
 
茶人のバイブルでもある岡倉天心の「茶の本」の冒頭には「茶道の要義は「不完全なもの」を崇拝するにある」と書かれてます。「茶道は日常生活の俗事の中に存する美しきものを崇拝することに基づく一種の儀式である」ともあります。
 
これを突き詰めていくと、帰庵というのは、それを体現するひとつの形なのかもしれない、そう感じました。不完全のなかに美しさを見つけるというのは、非常に人間的で、文化的なことだと思います。機械には出来ないことというか。
 
 
この茶室のことを考えていると、中坊公平さんの「金ではなく鉄として」という本に、私が学生のころ感銘を受けたことを思い出します。この本を読んだのはもう15年以上も前の話なので細かい文章までは思い出せませんが、彼は自分は金(選ばれしエリート)には敵わないけど、鉄は鉄なりに泥臭く謙虚に生きていく、という信念で、世のため人のために着実に結果を積み上げていきます。逆に読めば、いくら成功しても、自分を金だと思っちゃいけない、謙虚になければいけない、と自分に言い聞かせていたのかもしれません。私の祖父が「勝って兜の緒を締めよ」と私に言い聞かせましたが(私はまだ勝ってないので締める緒もありませんが笑)、それとも通じる話です。

茶道の考え方は、色々なものが昇華されていて多少抽象的に感じますが、中坊先生のこの考え方は、非常に実践的です。そして、それは謙虚にあらなければいけない、という茶道の教えに通じるものだと思います。

 
自然に対して、世界に対して、遠いところから自分を見つめて謙虚に生きる。これはある意味で、人生の目的です。
 
それを茶を通じて気づく、また、思い出す、そんなことをお茶ができる可能性があるわけです。お茶が持つ可能性にまたひとつ気づかされた瞬間でした。

ダイワ日英基金について

もう一つ、ダイワ日英さんについても、素晴らしい団体でしたのでメモを残しておきます。運営されている方のお話を伺い、日本から遠く離れたロンドンで日本のために活動してくれている方がいるんだと大変感動しました。彼らは今回のような文化交流のようなイベントをやることもありますが、むしろメインは、もう少し社会的なことだそうです。例えば、日中間で揉め事があったとき、中国はカネと権力を使ってロンドンでもプロパガンダを行うらしいです。しかし、日本はそういうことはしないから、大衆は中国側が正しいと信じてしまう。

そこで、彼らが、日本の立場を説明できるような専門家や学者を日本から呼んで、ダイワ日英基金のプレゼンルームや大学を借りてイベントを開きます。そして、日本側の意見を説明してもらう。話さえ聞いてもらえれば、日本の味方ができるわけです。そのやり方は草の根かもしれないけど、それがあると無いのとでは全く違うものです。

また、NPOであるため決して高給ではないそうですが、日本のことが好きなイギリス人の従業員が献身的に働いてくれています。責任者の方いわく、「私は日本人だから、この仕事は当たり前と思ってやってるが、何より感謝しないといけないのは、働いてくれているイギリス人のメンバーだ」ということをおっしゃっていました。ロンドンは特に大卒レベルの層の離職率が非常に高く、低い給与で雇用を維持するのが難しいということが背景にあります。

これを聞いて、中国がそんなプロパガンダをやっているのか、ということも驚きましたが、それに対策を講じてくれている日本人やイギリス人がいることに何より感激しました。

ロンドンの印象

最後にロンドンについてです。8月のロンドンの気候は、すごく過ごしやすかったです。雨が降ると結構涼しかったですね。テラスで雨の中、夜ご飯を食べたら、めちゃくちゃ寒かったです。
ロンドンの夏

食事は、、やっぱりあまり美味しいとは思わなかったですね。私が食べたものが二流のものばっかりだったのかもしれませんが。ロンドンではインド料理が美味しいと聞いて、「世界一美味しいインド料理」と言われるBenares Restaurant(インド料理のベナレス)に行ってきましたが、これは美味しかった。日本人好みの味ではありませんが、スパイスのおかげで味が深い。きちんと時間をかけて作っているということがわかります。ロンドンの料理は、どちらかというと味に深みがないような印象でしたので、余計にそう感じたのかもしれません。

写真はベナレスのカレー&シュリンプ的なメニューです。
ベナレス

あと、某日本食レストランで出てきた、イベントスタッフの方が注文した謎の寿司です。サーモンパラダイス的なメニューが、何故か寿司桶にこんな感じで盛り付けられておりました。。数年前に日本で話題になったスコスコのおせち料理のような感じでした。。

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