茶市場は値札のない過酷な寿司屋

新茶の季節で、バタバタする日が続いていますので、更新ができていませんが、気分転換にブログを書きます。ややマニア向けの茶市場の話です。

2017年の新茶の状況

2017年の京都では、4月の気温が低かったため、桜もとても遅かったですが、茶の時期も去年よりも全体的に去年より遅れています。4月末頃にまとまった雨があって、ゴールデン・ウィークからは気温もあがってきましたので、養分がぐっとあがって、最近の市場にならぶ茶葉は非常にハイレベルで、値段もやや高めに推移しています。

他人より高値を言わないと食べられない地価の寿司屋

茶市場のイメージは、「すべて地価の寿司屋さん」で値段を当てていくようなもの、といえばイメージできるでしょうか。
他人より低い値段を言っちゃうと、そのネタは永久に食べられないという過酷な寿司屋さんです。

私たち茶業者は、お気に入りの寿司ネタを食べるために、必死に考えるわけです。

(以下、例えば、カツオを「宇治田原産の玉露」、カ・ツオ君を「とある製茶業者」とでもしてください)

「この季節はカツオが旬だから、相場は◯◯円だろう。しかも今日のカツオは油がよく乗ってるから10%くらい高めで見る人が多いだろう。
そして、私は今日はカツオが絶対食べたい気分♡絶対に他の魚マニアには負けるわけにはいかない!
でも、かの有名なカツオマニアのカ・ツオ君は、今日のカツオにはきっと10%以上のプレミアムを乗せてくるだろう。カ・ツオ君に勝つには15%乗せで入札だ!」

みたいなこと考えるわけです。

ところが、稀にマグロ派だったはずのマ・グロちゃんが20%乗せで買ってきたりするわけです。基本的に商品は一点ものですから、落とせなかった私は、隣で美味しそうにカツオを頬張るマ・グロちゃんを眺めるだけしかできないのです。マ・グロちゃんもカツオの気分の日あるんや!クー悔しい!

・・・

この仕組は、フェアな分、とても過酷な現場です。高く買っては商売にならないし、安く言いすぎてはそもそも何も仕入れられないわけです。市場では、視覚・味覚・嗅覚・触覚・聴覚の五感すべてをフル活用して入札していきます。

この市場での仕事は、大変な分、お茶屋の醍醐味でもあるし、お茶屋の個性を形作る大切なキモになる仕事だと思っています。

実は茶市場で直球勝負している当社のような小売店は最近では少ないです。多くのお茶屋さんは卸問屋経由で茶葉を購入しています。工場すら持たない既製品のみの取扱のお茶屋も増えているようです。当社では、どうしても他社に渡したくない茶葉がありますので、それを安く確実に仕入れるために茶市場にこだわっています。卸問屋経由だと、確実でないし、当然マージンも乗ってきます。

荒茶を仕上げるのが腕の見せ所

こうやって仕入れた茶葉は、まだまだ荒い状態です。茎、粉、芽などが含まれた状態で、味はまだ生っぽい状態です。水分含有量も多くて、保存にも向かない状態です。

ここから、葉、茎、粉、芽などを分類して、火入れ(焙煎)、合組(ブレンド)して、バランスの取れた味に仕上げていきます。特に合組と火入れは味を大きく左右します。

工場での仕上げ工程をイメージしながら仕入れをしていくわけです。

こちらが玉露の荒茶。実際に私が落札してきた宇治田原の農家の山中さん作の玉露です。

全体に白っぽいですよね?茎が多く入っているのと、上級の玉露ならではの、柔らかい茎がめくれて細かくなった白いササクレのようなものが入ってるので白く見えます。これはとーってもいい玉露ですが、このままではお客様に出せませんので、ここから葉だけを抽出してお客様にお届けするわけです。

ちなみに、茎は当社では「白川」という茎茶に入ります。粉は、「大原」という粉茶に入ります。皮のめくれたささくれの部分は「はねだし茶」という水出し用の商品になります。この辺のハネモノの商品を買うのは、なかなかツウな買い物です。

お茶屋にとっての4月〜6月

さて、こんな風に毎日バタバタと仕入れと製茶を繰り返す日々ですが、多くのお茶屋さんで4月末から5月は休みが(多分)ありません。私は今日で30日連勤。

でも、私よりも、茶農家の方が大変です。規模の大きい農家さんだと、4月末の茶摘みから6月まで、毎日、朝から茶摘、深夜未明まで、もしくは24時間休まず工場をフル稼働させて出荷に備えます。

茶工場はこんな感じに摘みたての茶葉を製茶してます。

茶葉は、茶摘みが1日ずれるだけで、びっくりするくらい味がかわってきます。早くても遅くてもダメ、1日旬から遅れた茶葉には、高値はつきません。旬の見極めは農家さんの職人技です。しかも、好天が続くと一気に葉が大きくなります。でも、複数ある茶畑を同時に刈ることはできません。一刻を競いながら、連日働いているわけです。

こんな感じで大変な話を書いちゃいましたが、茶業界はとても面白い業界です。毎日真剣勝負、ピリピリ張りつめたテンションで働きます。

農家と、私たち茶屋が一滴の旨さにこだわって作った地域の特産品をぜひお客様に堪能していただきたいなと思う今日このごろです。

シングルオリジンで茶葉を販売開始します

さて、少しだけ宣伝です。
今年、実験的に合組(ブレンド)せずに仕上げた茶葉を販売することにしました。煎茶は、和束町の杉本優治さん、玉露は宇治田原町の下岡久五郎さんのお茶です。おそらく一般には知られてない名前かもしれませんが、茶業界の中では、知る人ぞ知る上質な茶葉を作る農家さんです。

とりあえず、本数限定の商品になりますが、別口で仕入れられれば少し商品を増やすかもしれません。まずは和束煎茶からサイトをオープンします。

この茶は、惚れ惚れするような味です。
ここはブログなので、語弊を恐れず言うと、静岡のお茶とは対象にあるような茶葉かなぁと思います。
人によっては、煎茶のイメージが覆るかもしれません。

合組してバランスをとった味がお好みの方もいるかもしれませんが、直球勝負のこの味も、一度試してください。煎茶だけど玉露っぽい、でも、玉露の感じではない、不思議な旨味のあるお茶です。これは和束町の厳しい山間の地形だからこそ作れる煎茶です。これが本当の上級茶なのか〜と、きっとご納得頂けると思います。

気軽に特別な茶を味わってほしいので、送料無料にしました。

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